第55章 杉浦正弘からの電話

灰原仁司の指が、ぴたりと固まった。

シャワーはまだ流れている。水は上から降り注ぎ、二人の手首を伝って、つうっと落ちていった。

杉浦杏奈は五本の指で彼の手の甲をがっちり押さえ込み、その掌を自分の太腿の肌へ、容赦なく押しつけていた。そこは彼女が擦り続けたせいで、赤く熱を帯びている。

「杏奈」

灰原仁司は動かないまま言った。

「離せ」

杏奈は離さない。むしろ力を増した。爪が彼の手の甲に食い込み、まるで釘で打ちつけるみたいに、彼の手を自分の身体へ縫い止める。

俯いた髪は濡れて頬に張りつき、表情は見えない。ただ、肩が小刻みに震えているのだけが分かった。

「汚れたの」

声はかすかで、水...

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